「ハワイの人」その4

何度かお会いしているうちに分かってきたのは、ここまでガッツのある人は珍しい、ということでした。プライドを持って働いている。ギブアップなんて言葉は俺の辞書にはないぞ、と言わんばかり。頑張りすぎて体を壊さないように、と何度思ったことでしょう。そんな人にまた、別の側面を先日見出しました。それは、子供のころ「ハラキリ」の作法をお祖父様から授かった、というのです。「切腹」です、「切腹」。冗談だろうと思いながら開いた口が塞がりませんでした。そしてそれはなんと事実だったのです。そして、その仕草を私の前でやってくれました。家の名前を辱めたら、腹を切れ、といわれたそうです。今聞いたら時代錯誤もはなはだしいと誰しもが思でしょうが、旧海軍軍人で国を想い、天皇を想って戦ったお祖父様は本気だったのです。さらに「恩を施されたら、倍にして返せ」、とも言われたそうです。ここまで、言われるともう心の中で“参った”としか言えませんでした。これらの話は、“ハワイの日系人は日本にいる日本人よりもはるかに古風だ”という証左ではないでしょうか。お祖父様は敗戦後広島からハワイに渡り、プランテーションで苦労をしました。「ハラキリ」を教わった彼はハワイ生まれの日系人。相当お祖父様の影響を受けたに違いありません。その結果、曲がったことは一切許さない。自分の家族は当然守るが、同様に仲間も守る。自分がいい思いをするのは二の次、三の次。ある時、仕事でいいオファーをもらいました。しかし、ここまで一緒になって頑張ってきた仲間を裏切れない、ここで成果を出すと決め、そのオファーを断ってしまいました。週6日、1日平均12時間から14時間働いているが、土曜日は余程のことがない限り休み、子供たちと過ごしています。成果を出すためには率先垂範。コストを抑えるためにも自分が何人分かの仕事をすればいいんだと割り切って、彼は今日も12時間以上働いています。

「この年で 度肝抜かれた 生き様に」