「ハワイの人」その3

彼女は理容師さんです。6年前から3週間に一度くらいの頻度で刈ってもらっています。はじめは、仕上がりの写真を見ながら刈ってもらっていました。ハワイに赴任する直前に、日本の床屋さんで刈ってもらったそのヘアスタイルを写真に取ってハワイに持ってきたのです。そうでないと、刈りかたを英語で説明するのは大変だと思ったからです。来た当初は、今よりも髪が多かったので、梳いてもらっていました。梳く、なんて英語で何と言うと知りません。これは、写真を見せてしまったほうが早いと思ったわけです。しばらくは写真を見ては確認しながらやってくれました。もう最近では勘所を掴んでいるので、こっくり”やっていても大丈夫、全く問題はありません。今はもちろん彼女にしかやってもらっていませんが、最初は考えてみればラッキーでした。順番で当たったのが彼女だったからです。しばらくして分かったのは、彼女がこの店ではナンバーワンだということです。他の理容師さんが空いていても、彼女にやってもらいたいがために客は待っています。他の理容師さんには気の毒ですが。もちろん、私も他の客と同様待っている一人です。しばらくして、ナンバーワンの理由も分かってきました。当然ですが上手なのです。さらに如才ない、と言っても話術が巧みで話に巻き込まれてしまう、というものではありません。ベトナム人の彼女の英語はそれなりに癖があります。多少聞き取りにくいのですが、要はいろいろ質問してくるのです。日本の生活習慣、気候、そうそう先日は地震の話になりました。私自身が経験した東日本大震災の様子を話し、多くの方が津波で亡くなり、何百キロも離れた東京での揺れで立っていられなかったという話には驚いていました。床屋さんは、髪を刈ってもらうところですが、袖すり合うも他生の縁、とも言いますし、床屋の椅子に座った人と刈ってくれる人同士が、散髪に関係のないことを茶飲み話のように話し合うのもいいもんです。

「梳いていた フサフサ髪よ どこ行った」