新しい印刷の概念

 ここ数年取り組んできたことを俯瞰したら、下記のようになりました。言葉にすると、明らかに今までの“印刷”の概念とは違うものです。これはあくまでも、欧文印刷に取っての新しい概念です。一般論ではありません。
1.印刷はマスプロダクションではない。
一般商業印刷物では、平均すると2,000から3,000部。多い時でも10万部。証券アナリストレポートに至っては、200から300部。それが、ウェブ名刺を始めてから100枚が標準になり、ブログ本の制作では1部から受注しています。
2.B2Cもマーケットになり得る。
世に言う印刷会社のお客様は企業です。従ってその取引形態はB2Bです。しかし、ネットで受注できる仕組みを持ったことによって、B2Cも新たなマーケットになりました。ところが、これはこれで新たなテーマが浮上したのです。それは、如何にマーケットを開拓するかです。そこで、既にB2Cのビジネスをしている企業さんに働きかけ、私どものB2Cサービスをその企業さんのサービスとして扱っていただく、すなわちB2B2Cという形態で展開していくべきだという考えに至りました。
3.必ずしもカスタムメイドとは限らない。
今まで作ってきたものは、特定のお客様専用の印刷物であり、1点1点がまさにカスタムメイドでした。しかし、いくつかのデザインパターンの中から1点を選んでいただき、そこにお客様特有のデータを入力していただいて作成する。このような作り方があっても、何も不思議ではありません。考えてみれば、私たちが日常買っているほとんどの物は、カスタムメイドではありません。数あるデザインの中から好きな物を選んで満足しています。多くの印刷会社はお客様を企業さん、と限定してきたので、このパターン化にはあまり興味を持たなかったようです。
4.印刷用データも商品である。
印刷物は製本という最終工程を経て製品としての“物”になります。しかし、最終工程に至るまではすべてデジタル情報です。一般的な製造業から見ると、この流れは大変珍しいのではないでしょうか。この流れになったからこそ、今、欧文印刷は“印刷用データも商品である”、なんてことが言えるのです。すなわち、“印刷”そのものはお客様か第三者におまかせするのです。私どもの仕事は、印刷用データを生成し送信する、それで完結します。
5.触覚に訴える印刷物。
最近は匂いを放つ印刷物も出てきましたが、殆どは視覚に訴えるものです。従って、多くの先進的な印刷会社は、どうすれば美しくなるかを追求しています。しかし、私どもは、“触覚”という感性に訴える印刷物、それでいて実用性をあわせ持つものを作ろうとしています。実はこの分野の方が、要求されるノウハウが広くて深いのです。ようするに真似されにくい、と言ったらいいでしょうか。このソフトがないとこれが出来ないとか、この印刷機があるからこんなものが刷れる、と言われている業界です。すなわち、何かやろうとするとソフトやハードを買わないと始まらない、逆説的に言うと、お金があればそれらを買える、すなわち、出来る、ということなのです。そういうものを追求していても、結局お金があるところが有利になってしまい、私どもみたいな中小企業はどうやっても、大企業には勝てないことになってしまいます。ところが、“ノウハウ”、は作り出すもので、買ってくるものではありません。“ノウハウ”や“やる気”のようにお金で買えないもの、これこそ競争力の原点ではないでしょうか。
というように上記の概念は、一般的な印刷会社とは異なります。しかし、主たる製品と言えば、これからも“物”であることには変わりはありません。そすると、そこには、“物作り”に不可欠な以下の要素があります。
 1.高品質安定化
 2.合理的生産システムの構築
 3.超短納期対応
これらの追求に手を緩めるわけにはいきません。私どもは、このように認識し、上辺だけの差異化に明け暮れることは致しません。また、“印刷物はコミュニケーションのツール”という位置づけも変わることはありません。従って、そのツール作りに関わる私どもは、コミュニケーションにおけるエキスパートでありたいと思っています。しかし、これは言うほど易しくはない、ということを痛いほど理解しています。だからこそ、常に意識してあらゆる手段を講じてエキスパートとしてのレベルを上げ続ける、これは必須だと認識しています。
いろいろ綴ってきましたが、最後に、大きな方向性について触れておきます。それは、“データベースパブリッシング”です。具体的なことはまだわかっておりません。しかし、数年前、自分たちの生業を製造業から“サービス業化”していくのだと宣言しました。その時点では、具体的な絵は描けてはおりませんでしたが、時間の経過の中で、今実現できています。“データベースパブリッシング”の概念は、決して新しいものではありませんが、これで利益が出るビジネスにしている会社は1社もありません。私どもは、その先駆者になるべく、模索していこうと思っています。