それぞれの役割

“会社は誰のもの”という議論が数年前にあちこちであり、その時は、アメリカ流の考え方を反映して、“会社は株主のもの”、と言われていました。正直言って、大いに疑問を抱いていたのですが、その後、社員満足度(Employee Satisfaction)を高めることが大事だと言われ始め、「株主重視」だとか、以前から言われていた「お客様重視」、それに「社員重視」というように様々な意見が飛び交うようになりました。
ある講演会で聴いた話は、大切なのはこれらの順番だ、というのです。その講師は、まずは社員、次に協力会社、そしてお客様、会社と来て、最後に特に意識することはないけど、前者4つが出来ていれば、自ずと会社の業績は悪くはならないので、配当も払えるから最後に株主だと、言っておられました。
私がおよそ14年前に作った経営理念では、社員、お客様、会社、社会、という順番でした。しかし、その後1番と2番の順番を変えて、お客様、社員、としました。勿論、社員にはどんな理由で、順番が変わるのか文章にしたものと朝礼などで説明し、特におかしい、というような議論にはなりませんでした。そして、上記の講演会でのテーマをきっかけにあらためて、ステークホルダー(企業の利害を共有する関係者)の関わり合い方を考えた結果、企業の状況においてそれぞれのステークホールダーの関わり合い方が違っていることに気が付きました。そして、それを考察し順番の議論に対する私見をまとめた次第です。
創業時―出資者がいなくては創業出来ません。
京セラの稲盛さんがおっしゃっていました。京セラは作っていただいたのだと。第三者の方の出資により創業が出来たのです。ということは、会社がなくては社員も雇えない、お客様もいない訳ですから、この時点で最も大事なのは、出資して下さる株主、ということになります。
成長時―仕事が回り始めます。お客様が増え、それにつれて会社も大きくなっていきますから社員も増えます。当然、協力会社も増えていきます。この時点では、お客様の存在と社員の活躍が会社を支えます。
資金調達時―成長もはじける段階に来ると、社屋の拡張、設備投資の拡大、あるいは出店というように大きな資金が必要になってきます。この時点での資金需要に応えてくれるのは、間接金融なら借り入れ、直接金融なら増資、ということになり、株主数の拡大ないし既存株主からの増資の受け入れになり、株主にスポットライトが当たります。
上場時―この時点では、まさに株主にスポットライトが当たります。
上場後―主にお客様、社員、協力会社さんによって支えられます。
このように企業の置かれた状況によって、各ステークホールダーの重要度が異なってきます。従って、常にどういう状況においても株主が第一、ということにはならないと考えます。むしろ、会社の体をなした後は、お客様と社員が会社にとって最も大事である、と言えるのではないでしょうか。
ところで、社員とお客様はどちらが大切かという議論をします。前述のように、私どもは、当初、社員をお客様よりも高位に位置づけましたが、その後、その順番を逆にしました。その理由は、企業の発展はお客様に評価されるかどうかにかかっている、と言う事実です。評価されなかったら、自ずと業績は低迷あるいは低下していきます。従って、あらゆる手立てを打って、お客様に評価されるように努力をするわけです。このように、まずは、お客様のことを考えることが大切だ、ということでお客様を第一位に位置付けたわけです。
こういうと、いやいやお客様に働きかけるのは社員だから、その社員が意欲的にならなければならない、従って、まずは社員がやる気を出せるように、まずは社員、と考えるべき、という議論になります。実はこの考え方ももっともで否定できません。
ここであらためて企業活動の根本を考えてみます。それは、社員がいなかったら企業として存在出来ませんし、お客様がいなかったら収入も無いわけです。要するに、どちらも必須の存在です。ということで、社員はお客様を常に念頭において、お客様に喜ばれる仕事をする、会社は、社員が意欲的になれるような努力をする、ということに尽きるのではないでしょうか。すなわち、順位付けは意味が無い、と思われるのです。
“順序より 支えられる 企業となれ”